警策
第32期生 S.T.
坐禅は初めてではなかった。自宅からそう遠くない場所にある曹洞宗のお寺の坐禅会に三、四回参加したことがある。しかし、警策を受けることにはためらいがあり、敬遠してきた。
今回の修行は折角の機会なので、警策を入れてもらおうと決めていた。高野公義和尚が回ってくると合掌し、お辞儀をして、両肩に手を回して頭をたれる。ビシッ、ビシッと音を立てて警策が入る。その瞬間、耳がキーンと鳴った。しかし、とても気持ちがよく、眠気が吹っ飛んだ。
一度受けると病み付きになり、高野和尚が回ってくるたびに、眠くもないのに警策を入れてもらった。
「ボーっと生きてんじゃないよ」。人気のチコちゃんの決め台詞だ。ひょっとしたら、これが禅の真髄なのだろうか? 高野和尚も繰り返し、「時間を無駄にしないでください」とおっしゃっていた。チコちゃんの話もされていたように思う。研修所の壁には「一大事とは今日只今の心なり」と書かれた色紙も飾られていた。
禅の修行は厳しそうだ。禅寺で三百六十五日修行生活をするとなると、腰が引ける。しかし、時々、週末にでも禅寺に赴き、心を払拭する時間を持つことは意味のあることだと感じた。合掌