こころの時代 ①-道を求める姿勢-

東京大学名誉教授であり、東京国際仏教塾の第1期から13年間にわたり、講師をお引き受けいただいた鎌田茂雄先生。1996(平成8)年、東京国際仏教塾のスクーリングでの講演を連載でお届けします。鎌田先生は2001(平成13)年に遷化されました。しかし、先生の講座の内容は、現在でも古びません。
「こころの時代-道を求める姿勢-」から、一遍上人について述べられた部分を全7回でお送りします。

《序》
人生には様々の事が有り、色々の機縁に出会います。縁も生まれます。 一遍上人のお話にあたり、上人所縁の遊行寺に、私はご縁を感じます。 私は内外の寺院をよく訪ねますが、皆様にも折に触れ、方々の寺院を参詣なされたら、有り難い事と存じます。

《「故宮」テレビ取材》

現在NHK総合テレビで「故宮」という題で放映している番組があります。中国の文明を故宮博物院の文物を通してお見せしています。
故宮博物院の文物、実は現在北京に有るのは残り物なのです。良いものは蒋介石が駆逐艦で台北に運びました。そして台北の故宮博物院、あの裏は山がくり抜かれていまして原爆の攻撃にも耐えられるよう設計されているのですが、その中に何百年かかっても展示しきれない程の量の中国の文物を保管しています。
それをNHKで撮影しました。
ですから、故宮博物院と云っても台北と北京のものと両方の文物を、歴史の興亡の解説を交え、12回に分けて来年の1月迄、テレビを通して皆さんにお見せします。
ただ、残念なことに仏教は12回の放送の内、1回しか入りませんでした。青銅器から始まって映すものが余りに多く、仏教の出る余地がありません。しかし、仏教を入れなくてはと、第5回に取り上げました。
昨年から今年にかけてNHKの人と仏教の中で何を撮るか、その下見に行きましたが、中国では驚くべきものが色々見付かっているのです。
例えば、北京から南に下ると河北省の省都、石家荘と言うところが在りますが、そこから2000体の石刻像が出たのです。それで北京の故宮博物院と石家荘の博物館で保存しています。
石家荘の博物館の保存現場を見に行ったのですが、それは地下室に保管されていて良いものは整理して公開しておりますが、他は箱の中に入れっぱなしにしているだけなのです。
どうしてそれらが見付かったかと申しますと、この辺りの田舎ではお百姓さんが、冬に野菜が無くなるのに備え、畑に穴を掘りまして野菜をそこに入れます。保存のために日本でもさつまいもなどを入れますが、そこで、或るお百姓さんが野菜を埋めようと思って掘っていて発見したわけです。やがて、本格的な発掘が始まって2000体出てきました。
おおよそ、北魏から唐にかけての仏像です。何故こんなところに埋めたのでしょうか。
現在、何もないところです。
南宋の時に建った塔がひとつ在るだけです。何故埋めたのかと云うと、やはり、廃仏ということがあったからなのです。
-つづく-