『本の世界をめぐる冒険』

夜になると本を読む気になれないのは、同年代、共通の悩みのようです。本を読みたさに、これまでの夜型から朝型生活に変えた人のなんと多いことか!
そんな本好きを自認していても、本「そのもの」の歴史まで遡っていった人は少なかったようです。ナカムラクニオ氏著『本の世界をめぐる冒険』(NHK出版)は、この盲点を突いてきました。
第1章 改めて、本ってなに?
第2章 本はどのように進化したのか
第3章 日本の本クロニエル
第4章 本の未来をめぐる冒険
全4章構成になっています。
第1章の冒頭に〝むかしむかし「本」は人間でした。〟とあります。つまり、お能などの伝統文化や仏陀の教えなど脈々と人間を通し伝えられてきた「口伝」は、本というカテゴリーに属することになります。
時代が進むにつれ、本の形も変わってきます。いまや、インターネットで調べるコンテンツすら本というカテゴリーへ。日ごろは裸で生活しているパプアニューギニアのセビック族を訪ねた著者がFacebookをやっていないと伝えると、現地で「遅れているな」といわれたエピソードがありました。原始からスマートフォンという、新たな本のスタイルへ一足飛びに進んだ現実、なかなか新鮮な見方です。
東京国際仏教塾に入塾すると、これまでの日常とは違った本に出合うことにもあると思います。そんなときに、この本の捉え方を思い浮かべてはどうでしょう。 本は、時代を飛び超えて「人と人」「人と情報」を〝結ぶ〟ツールという考え方です。新たな本との出合いが、新たな人や時間、場所へとつながるために役立つ存在と認識されること。そうなれば、人生のバリエーションやカテゴリーがぐっと広がるように感じるかもしれません。
ナカムラクニオ氏プロフィール/東京・荻窪のブックカフェ『6次元』主宰。アートディレクター、キュレーター、金継ぎ作家でもある。著書は今作以外に『古美術手帖』(玄光社)ほか多数。

#東京国際仏教塾 #ナカムラクニオ #本との出合い #新しい発見

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