丹田は身体の真ん中
1998(平成10)年、東京国際仏教塾の開講式で行われた鎌田茂雄先生の記念講演のを18回に分け、ご紹介しております。本日は第11回です。
ほとんど知る人はいないと思いますが、 平野重誠という江戸末期のお医者さんがいます。
この人の著書に 『養性訳』 という本があります。
これは、 養生する、 身体が悪いから養生するという意味では全くありません。 生命力をいかにして養うかという本なのです。
「琴、 三線などの芸をするにも、 その名を得たるものは、 指をもって弾くことはせずして、 ただ必ず臍ほぞの下 (臍せい下か丹田たんでんのこと) の兼ね合いをもってする由、 その達者に聞くところなり」
一切の芸は、 指でするものではなく、 臍下で行うものである、 と言っているのです。 ですからいかに臍下丹田ということが重要かということなのです。
では、 息を整えるにはどうしたらよいかという、 全身の息を臍下に充実させること。 臍下に集中させることが、 息を吐くことなのです。
その後どうするかというと、 手足を軽やかにする。 顔、 肩、 背、 胸、 手足、 全部を軽やかにする。
これはなかなか出来ないことなのですが、 肩や手足に力を入れない、 ということは非常に重要になってまいります。
皆さんもよく御存知のことですが、 物を運んだり物を持つとき、 決して手では持ちません。 どこで持つかというと腰で持ちます。
必ず腰を下まで落として、 腰で持ち上げます。 それをうっかり手で持とうとすると、 ぎっくり腰になってしまうのです。
平野重誠はこうも言います。 丹田は身体の真ん中である。 手足を動かす根本である。 鼻と通じて天地の大気を引き込むところである、 と言っています。
したがって、 丹田は息を引き込むところでもあるのです。 天地の気というものが、 鼻から入ってきて終局的にはここに集まる。 そしてまた鼻を通じて出ていくのです。
だから丹田は根本であると説いていくわけです。 -つづく-