格闘家の衰え

私も毎日夕方、 合気道をやっておりますけれども、 若い者を相手に格闘術ですが、 週に6回、 6日やっていますが、 やっぱり衰えていきます。 10年前のときと、20年前のときではやっぱり確実に力は衰えていくんです。 ただ、 力は衰えていきますけれども、 力を入れない力というのは鍛えられるのです。
若いときは力でやっていますけれど、 それがだんだん力を入れない。 もうこのごろは、 いかにして力を入れないかというのを研究しているんです。 どうして力を入れないのがいいかというと、 力を入れたものは力で滅びるんです。 全く力を入れないものは一番の強さを持っているのです。 ですから恐ろしいもので、 いかに力を抜くかということをこのごろ一生懸命研究しておりますが、 なかなかわからない。
例えば年寄り同士、 と言ってもほとんど私の年の人はだれもいないのですけれども、50代ぐらいの人を相手にやるときは、 それなりにゆっくりやります。 相手が20代、30代ぐらいで三段なんていうと、 こっちもついちゃんと構えるんです。 それがいけない。 相手が三段であっても四段であっても、 全く構えないようになればだんだん達人になるんですが、 人間そういかないのです。
相手の力がモリモリしていて三段、 四段というと柔道でも一番充実期でしょう。 ですからこっちも、 こんな野郎に負けてたまるかと思うでしょう。 これがいけない。 そうすると力が入っちゃうんです。 それが全くどんな人が前へ来ても、 どんな人を相手にしても、 全く力を入れないでいかに相手を投げ飛ばせるか、 ということがやっぱり道なんです。 道をきわめるというのは。 ですから、 それを一生懸命工夫していますが、 どんなにやってもだめです。 必ず衰えてきます。
例えば柔道家を見てごらんなさい。 長生きできないんです。 なぜかというと、 無理に無理を重ねるでしょう。 だから柔道家というのは60ぐらいでだめなんです。 どこをやられるかというと、 足をやられちゃうんです。 膝をやられまして、 若いときに無理な技を腕力でかけるでしょう。 どうしても膝に負担がかかっているんです。
相撲取りを見てください。 決して長生きできないです。 やっぱりそれは肉体を無理に酷使しているからなのです。 ですから無理はいけませんけれども、 年寄りは年寄りなりに、 自分の分をわきまえてやればいいかなという感じはいたします。 しかし、 どんなに頑張っても老いることは防げません。 これが大事なことです。
『ダンマ パダ』 という原始仏典を見ると、 次に書いてあるのは死のことです。 インドへ行きますとバラナシというところがありますでしょう。 日本人はあれをベナレスと言うんだけれども、 バラナシへ行きますとガンジス川が街のはじを流れています。

こちらは、東京国際仏教塾第12期開塾式の特別講演で鎌田茂雄先生にお話しいただいた内容を抜粋して紹介しています。
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