浄土真宗 得度式に臨んで

東京国際仏教塾31期、32期生の得度式後。大洞龍真副住職、大梅副住職、大洞信嗣塾長代行とともに。

釈貞慧(第32期 岩原貞雄)

新型コロナウイルス禍という前代未聞の状況のなか、9月26日、無量寿山光明寺において得度式を挙行。得度を受けたのは東京国際仏教塾第31期、32期を中心に計13名。本来の得度式の準備に加え、感染対策にも細心の注意を払い、式務局の方が、例年より多人数の受式者をテキパキと仕切ってくれました。
12時半、岐阜光明寺に集合。儀式の流れの説明を受けた後、面接室へ入る際の襖の開け閉めの作法等教えていただいたが、皆、緊張のあまりうまく頭に入らない様子。私も、入室時は何とかできたものの、退出時にはもう滅茶苦茶の状態でした。
面接は、正面に大洞龍真副住職、右手に大梅副住職、そして左手に大熊信嗣塾長代行が座られ「なぜ得度を受けようと思ったのか」などの質問を受けました。頭の中を整理しながらたどたどしく答える私の仏道によせる思いを、おふたりの副住職が暖かい眼差しで受け止めてくださるようでした。また、保護者のような笑みを浮かべた大熊師が、緊張している私にとって実に頼もしく感じられたものです。

白衣に着替え、得度式へと向かう。

面接後、白衣に着替えて本堂で得度式へ。大熊師の合図で五体投地を行ったところへ、おふたりの副住職が出仕されました。大洞龍明住職は少し体調を崩されていたとのことですが、そのようなことは微塵も感じさせず、全身から発せられる凛とした空気が我々全員の胸を震わせるようでした。
蝋燭の仄かな明かりだけの暗がりの中での「お剃刀の儀」です。一人ずつ進み出て、ご住職の前で正座し合掌。ご住職が「流転三界中 恩愛不能断 棄恩入無為 真実報恩者」と、ゆっくりかつ力強く唱えながら、頭に剃刀を当ててくださいます。「迷いの世界を輪廻している間は恩愛を断ち切ることは難しい。だが思い切って、それらを棄て仏門に入ることこそ真実に恩に報いる者なのだ」というこの偈に、いよいよ仏道の入り口に立ったのだという自覚が漲りました。
順番を待ちながら儀を受ける人たちの姿を見ているうちに、やがて私の中に熱いものが込み上げてきました。こうして一人でも多くの仏弟子を育てるべく、得度の儀を執り行ってくださったご住職の真摯なお姿に、いつしか釈尊や親鸞聖人のお姿を重ねていました。
「一人でも多くの人に仏道を伝えていくことが大切なのだよ」そんな強い思いが本堂の張り詰めた空気の中に満ちているようでした。その時、押さえきれない感動のすすり泣きが聞こえたのは、私の気のせいだったでしょうか…。
儀式は厳粛に進められ、盃の儀、墨袈裟・念珠の拝受を経て、黒衣に着替えての初勤行。その後、度牒と法名の下附を受け、無事終了となりました。
得度は一生に一度のもの。そして厳粛な得度式は何物にも代え難い感動を我々一人ひとりの胸に刻んでくれました。このご縁に感謝して、僧徒としての精進を誓いつつ帰途に就きました。   合掌。

蝋燭の明かりの下で執り行われた「お剃刀の義」

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