感傷的な日本人②

東京国際仏教塾第12期の記念講演で鎌田茂雄先生にお話しいただいた内容を、一週間に1回、計5回に分け、ご紹介いたしました。
今回で最終回となります。学び多き内容に感謝いたします。

「物には栄枯あり。 人には死生あり」。 物には栄枯、 人には死生、 簡潔でいいですね。 物には栄えるときと枯れるときがあります。 人には死と生があります。 同じことですね。 生ということは栄えるでしょう。 死というのは枯れる。 万物にはみんな栄枯があります。 人には死生があります。
それを今度は時間的に考えると、 「昼夜はこれ一日の死生にして」、 昼と夜というのは一日の死生だ。 夜が死、 昼間は生でしょう。 だから一日の死生は夜と昼。 「呼吸はこれ一時の生死なり」。 呼吸というのは一時の生死だと。 吸ったときが死なのか、 吐いたときが死かどちらかわかりませんけれども、 呼吸も生死だと。
呼吸というのは、 私の考えでは吐く息が大切なんです。 生命を維持するのは吸った息なんでしょうけれども、 実は吐く息が大切。 呼吸というのは吐くことによって吸えるのです。 だから、 吐くことが大切なのです。 吸うことは意識しない。 吐いていれば必ず吸える。 それは当たり前ですね。 皆さんでも息をずーっと吐くでしょう。 これは吸わざるを得ないので、 だから吐くことに重点を置いているわけです。
佐藤一斎先生はどっちに重点を置いたのか私にはわかりませんが、 とにかく呼吸というのは、 一時、 一瞬の生死である。 そこにも刹那の人生と書いてあります。 刹那というのは一瞬でしょう。 そこに呼吸は一瞬の生死であるということを言うわけです。 佐藤先生のおっしゃることは、 儒者としては仏教を知らなくてもそんなようなことを言っているわけであります。