沖縄の「エイサーと仏教」⑦

東京国際仏教塾卒塾生の並木浩一さんによる書き下ろしエッセイを連載でお届けしました。第一部の公開は全7回、最終回です。

千原エイサー、沖縄戦の悲劇からの復活

いまも「念仏するエイサー」の伝統を守っているエイサー団体の代表格が「千原(せんばる)エイサー保存会」です。まず念仏から始まるそのエイサーは、まさに伝統的な念仏踊りの系譜にあるものだと言えるでしょう。そしてその守り手が「青年会」ではなく「保存会」であることには、理由があります。実はいま、千原地区であるはずのシマ=集落は存在していません。その地、嘉手納町字千原はいま、ほぼ全域が米軍の嘉手納飛行場の中にあります。第2次世界大戦、壮絶な沖縄戦の果てに、銃剣とブルドーザーで米軍に接収された。まさにその土地なのです。
しかし、失われた集落のコミュニティは絶えることがありませんでした。住む地を追われた千原地区の住民と子孫たちは1960年、千原郷友会を結成。郷友会を母体に、千原エイサー保存会が発足しました。
いま、沖縄のエイサーを語る上で、千原エイサーの存在は欠かせません。著名な青年会が技を競う「全島エイサー祭り」でも、ひときわ人気を集めるのが千原エイサーです。在沖駐留米軍は年に1度だけ、嘉手納基地の中にある千原地区の聖地に、千原エイサー保存会の立ち入りを「許可」します。伝統を守り続けるエイサーはその日、父祖の地で奉納されます。

第一部の公開は今回で最終回ですが、近日中に、“沖縄の「エイサーと仏教」”の第二弾をお届けいたします。お楽しみに!

Profile:並木浩一(なみきこういち)
1961年横浜生まれ。桐蔭横浜大学教授。時計ジャーナリスト。ダイヤモンド社「ダイヤモンド・エグゼクティブ」「TVステーション」両誌編集長、編集委員を経て大同大学教授(メディア論・芸術論)、2012年より現職。編集者時代に東京国際仏教塾9期入塾、「仏教を学ぶと、生きるのが怖くなくなる」と実感し、専門課程を経て浄土真宗で得度。「沖縄のエイサーと念仏」についても研究中。
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