能の舞台に見る人間性
『俊寛』は、『平家物語』に登場する僧の物語です。彼の運命は世阿弥や近松門左衛門の作品となり、今でも、多くの名優たちが演じています。派手さがない、けれん味のない物語にも関わらず、なぜ、永年愛されるのでしょう。
先日、人間国宝の友枝昭世師が舞われた喜多流『鬼界島』(喜多流のみ、このタイトル名になります)で、その答えに出合ったように思います。
俊寛の人間くささです。
僧という身で流刑され、一緒に流された他の2人には恩赦が与えられたにも関わらず、唯一、自分の名がない。御赦免状を奪い取り、手をガタガタと震わせ、何度も、何度も文字を追い、さらに書状をひっくり返し、確認します。しかし、自分の名だけ見つけることは出来ません。慟哭しながら、去ろうとする船に追いすがり、舟人からは櫂で打たれても、なお追いすがる…。
その姿は哀れ以外のなにものでもありません。
因果応報と言ってしまえばそれまでですが、人間の執着心が起こす苦諦の意味をまざまざと見せられた気がしました。
大河ドラマの影響なのかもしれませんが、平安〜鎌倉時代に題材をとった舞台が昨今多いように思います。機会があれば、ぜひご覧ください。
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