だれも一緒に来てくれない「無一随者」④

みんな借りもの】

商人は私たち自身です。旅は「死出の旅」です。第一夫人は自分の身体。どんなに大事にして気を配っても老いさらばえて最後はボロボロ、老体は言うことをきいてくれません。第二夫人は財産、お金です。お金さえあれば何でも出来そうですが持っていくことも出来ません。第三夫人は家族・親族。町の境はお墓です。親戚と時々会って歓談し、葬儀もしてくれますが、そこまでで墓の中までは付き合ってくれません。

生きていく上で必要なもの、大事なものが身の周りにたくさんあると重宝ですが、実はそれらは自分のものではなく、借り物です。最後は自分だけ。何一つ持って行くことは出来ません。まさに「独去独来 無一随者」。これが現実です。

実は、この話にはおまけがあります。この男にはもう一人、第四夫人がいました。いつも傍にいるのに気にもかけず話かけられても無視して召使いのように扱っていたのを思い出します。同行を頼むと第四夫人は「私は親元を離れてあなたに嫁いで以来ずっと一緒でした。どこでもどんな時も死ぬ時も一緒です」と答えます。良かったですね。第四夫人は、自分の心、自分自身の内面の譬えです。人は欲望や世間の価値観に振り回されて自分を見失っていることに最後まで気がつかないのです。いざという時に慌てないよう、自分の心をしっかり育てておくように、とお釈迦様はお説きになっています。

全6回の連載です。次回の掲載は、9月23日(金)になります。

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