恐山で出合った“極楽”

東京国際仏教塾のトップ画面を飾る僧侶の写真、こちらを撮影した篠原宏明さんの写真展『horizont』に伺いました。

彼が造り出すモノトーンの世界観は、独特。これまでとは違った被写体へのアプローチもあり、滞廊時間が長くなるばかり。並ぶ写真の中に「これ、恐山の霊場で撮影」と示してくれた写真がありました。それは湖と山の写真。恐山のイメージとはかけ離れた、優しい光が湖面を揺らす写真です。

もともと恐山が目的の旅ではありません。仕事で東北方面へでかけた、そのついでにレンタカーを走らせた思いつきの行動。向かう途中から冷たい雨が降ったり止んだり。到着しても景色は暗い。
撮影する気持ちが萎え、同時に、恐山菩提寺を観光客気分で撮影するのが申し訳ない気分にもなり、本堂に参拝したのち、境内を散策。先にある宇曽利山湖へ向かいました。

湖に到着した瞬間のこと。目に入ったのは、覆っていた雲がほどけ、光が差し込む様子です。滞在中、シャッターを切ったのは、この1回だけ。そして、照れながら「涙が溢れてきたんです」と。

え、なぜ?と問うと、
「あの人たちは、もうこの世にいない。あの光が指す方角へ向かったのだ。惜別の思いというのでしょうか」。

どのくらいの時間、その場に留まっていたかはわかりませんが、時期は昨年10月。冬には早いとはいえ、体が冷えきってしまったそう。
そんな彼の目に次に飛び込んできたのは、境内にある温泉施設。湯船で温まりながら、生きている人間とってわかりやすい極楽は「こっちだろうな」。

篠原宏明写真展『horizont』 〜1月29日まで(13:00〜20:00)
会場:サードディストリクトギャラリー 新宿区新宿3-8-9 新宿Qビル4F
TEL:03-3269-5230

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