技術だけでなく、心も大事

東京スカイツリーは世界一の高さを誇る電波塔です。浅草から近いこともあって、東京の新名所になっています。
武蔵(むさし)の国の名にちなんで、高さ634メートルになったということですが、その雄姿は関東平野一円から見ることができます。

このスカイツリーは意外と思われるかもしれませんが、寺院の五重塔に用いられている免震技術が使われています。現存する日本最古の塔は奈良・法隆寺の五重塔で、1400年前に建てられました。スカイツリーは飛鳥時代からの塔にある「心柱」の技術を採用し、さらに現代建築の最先端の免震技術を併せて建てられています。

仏塔の「心柱」は塔内の中心最上部から基底の礎石近くまで、吊り下げられています。最上部以外は、他の構造物には触れていないため、ほぼ独立した存在です。この心柱は何といっても地震や強風による揺れに、その真価が発揮され、飛鳥時代以来、寺院の塔は火災による焼失はあったものの、地震によって倒壊した例はほぼ皆無です。
法隆寺の寺院大工家を代々継承してこられた西岡常一棟梁は、生前よく飛鳥時代以降の建築技術は、ただ木を組みあげていればいいということではない。大切なのは「人組み」であるといわれていました。棟梁がいう「人組み」とは、職人一人一人が心をひとつに揃えていき、各人がこのような塔を作っていくというイメージを共有することで、それができていないと塔は立ち上がらないということだそうです。

東京スカイツリーを建てている時の様子が当時よく放映されていましたが、そのなかで印象深かったのは、朝礼で大勢の作業員が体操をしたあとに、全員で声を揃えて安全確認を復唱し、お互いの装備の点検をしあって、さらには円陣を作って前の人の肩を揉みほぐしているシーンでした。

スカイツリーの建設現場に千年以上前から職人たちに受け継がれてきた「人組み」の一端を見た思いがしました。
東京スカイツリーは日本が誇る古代からの技術と現代の技術、そこに「人組み」が見事に合わさって完成したといっても過言ではありません。

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