大乗仏教の基本を学ぶ(第32期開講記念講演)

聖徳太子以来の日本の仏教は、中国あるいは朝鮮半島を通じて入ってきた、いわゆる北伝仏教というもので、これは大乗仏教ですね。最近は上座部仏教というものも少し入ってきておりますが、日本の伝統的な仏教は、どの宗派も大乗仏教と言って間違いありません。今日は、その大乗仏教の基本的なところについて、お聞きいただけたらと思います。

初めに、そもそも仏教というのは、おおよそ原始仏教、部派仏教、大乗仏教、密教の四つに分かれるというかたちになります。最初は、釈尊自身の仏教、あるいは釈尊の直弟子あたりの仏教ですね。この文献としてはなかなか難しいものがあります。一応、漢訳では『阿含経』、パーリ仏教では『ニカーヤ』と呼ばれるものに残されていると言われているわけですが、それらはかなり後世の人の手が加わって編集されたものであり、『阿含経』といえども、釈尊が説法されたものそのままかというと、相当問題もあるでしょう。
釈尊の説法そのものに一番近いであろうと思われるのは、『スッタニパータ』です。これは、元東京大学の印度哲学科教授で、文化勲章を受章された中村元先生の日本語訳が、岩波文庫で『ブッダのことば』として出版されております。これは私も大変好きな本でありまして、例えば四諦八正道十二因縁とかと数的に整理される以前の、もっと生き生きとした、相手に応じた、素朴な教えが説かれているものです。その釈尊自身の仏教を原始仏教、あるいは根本仏教と呼びます。

※上記は第32期の開講記念講演の一部を抜粋したものです。
※詳しい内容を知りたい方は、冊子「佛教文化」199号をご覧ください。