大乗仏教の菩薩とは
1 大小乗の並立の歴史的背景
「大乗仏教の菩薩とは」をテーマにお話するにあたり、まず大乗仏教の概要を見てまいります。
釈尊が活躍した時代は紀元前500年ぐらいですが、これについては世界中の仏教が、それぞれの地域で、違った釈尊の生存年代を考えています。例えば、南伝仏教はパーリ仏教、南アジアや東南アジアを中心とした地域の仏教をいいますが、南伝では北伝に比べて、百年ぐらい古く想定しています。世界中の学者が釈尊の生存年代を討議したこともたびたびありますが、明確な定説はいまだにありません。
初期仏教は釈尊の代から孫弟子ぐらいのころの釈尊の影響がまだ色濃く残っていた150年から250年ぐらいの時代の仏教をいいます。その後、アショーカ王の時代に、生活規定の問題に端を発して仏教教団は上座部と大衆部の二つに分かれるという根本分裂が起こります。長老(テーラ)を中心に伝統的な生活を維持しようと考える人たちをテーラヴァーダ(上座部)と訳しています。
そして、もう一方はマハーサーンギカ(大衆部)というのですが、これは人数が多かったからです。貨幣経済が浸透してくると、旧来の生活規定に基づく伝統的な生活が維持できなくなります。金銀を蓄えることをどこまで認めるかということが問題になります。社会の中で貨幣を使わないで生きていけるか、教団を運営できるかという問題です。このことが、上座部と大衆部の分裂の一つの重要なポイントになっていきます。
そして、上座部と大衆部から多くの部派に分かれていきました。この時代の仏教を部派仏教といいます。部派仏教は多くの学派、地域に根ざした仏教となり、それぞれのグループにまとまっていき、そして、それぞれのグループでは、仏教教団の運営の仕方が決められました。これがヴィナヤ(律蔵)です。律というのは、現在の日本では、日本国憲法があり、法治国家としてそれを構成する基盤があり、さらに多くのほかの法律に基づいて国家が運営されているわけですが、仏教教団での法律がこのヴィナヤ(律蔵)です。
三蔵法師の三蔵というのは経・律・論のことですが、律とは律蔵で、個人が守るべき決まり、この決まりは250前後あり、それ以外に教団が守るべき集団としての規則が作られていました。そしてこれらは男女によっても違うものです。
※こちらは第35回スクーリングで行われた渡辺章悟先生の講義の冒頭の一部です。
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