大乗仏教論

現代社会の大乗仏教
私たちの世界には仏教徒が約三億六千万人いるといわれる。これは世界人口の約5.9%を占めているが、その割合は、キリスト教33%、イスラム教19.6%、ヒンドゥー教13.4%についで、世界第四位の宗教ということになる(無宗教、中国系の民俗信仰を除く)。その仏教徒のうち、約250万人が北アメリカに、150万人ほどがヨーロッパに 住んでいるが、大部分の約三億五千万人はアジアに住んでいる。
仏教は一般的には、大乗仏教(北伝)と上座部仏教(南伝)とにわけられる。しかし、その教義や成立の時期、儀礼などが異なるため、大乗仏教から密教(タントラヤーナ)を別立てにすることもしばしばある。『ブリタニカ』もこのように分類をするが、その統計によれば、大乗仏教徒の人数は、仏教徒全体の五十六%の二億百六十万人、上座部仏教徒(小乗)は三十八%の一億三千六百八十万人、密教(タントラ乗)が六%の二千百六十万人で、このうち大乗仏教が広がったのは東アジアの漢訳文化圏であり、タントラ乗はヒマラヤ周辺諸国のチベット語 文化圏である。

しかし、驚くべきことに、日常的にサンスクリットの大乗仏典を読誦している地域も残っている。それは仏教の故地インドではなく、隣の国ネパールである。最近のインド仏教は、新仏教徒(ネオ・ブッディスト)として知られるが、彼らの信仰するのは上座部仏教であり、これにチベット系の人々により、タントラ乗の仏教がかろうじて信仰されているにすぎない。しかし、山間の辺鄙な地域のネパールでは、チベット仏教とともに、ヒンドゥー教と習合した独特の大乗仏教が守り続けられている。

※上記は第29期のスクーリングの講義の一部を抜粋したものです。