大乗仏教論「大乗仏教の菩薩とは」(第31期スクーリング講義)

大乗仏教は仏滅後、およそ四、五百年経過した紀元前後にインドで起った新しい仏教運動である。そのころ、北西インドではクシャーン朝、南インドではアーンドラ王朝が勢力を拡大しつつ、比較的安定した時代に入っていた。この時代になって、仏教の形態や思想は大きな変化を遂げるようになった。従来の伝統仏教では単数であったシャーキャムニ・ブッダから、あらたに複数の諸仏・諸菩薩の信仰が生れ、それら諸尊が活躍する場としての世界観の組織化が行われた。それに伴い、ブッダに到る修行法の多様化や修行階梯の再編が長い時代を経て確立していった。その革新運動は、新しい大乗経典の成立という形で、多種多様な教えとなって展開し、インドから中央アジアを経由して中国・朝鮮・日本へ、あるいは直接チベット・モンゴルなどの東北アジア一帯に広まった。

その言語領域はサンスクリット・プラークリットのインド系言語から、中国周辺の漢字文化圏、チベットを中心とするヒマラヤ周辺地域のチベット語文化圏が主な地域であり、その様相は地域的な特徴を含み多様な形態を持つにいたっている。仏教が世界宗教といわれるのは、この大乗仏教の広がりと多様性によるものである。

※上記は第31期のスクーリングの講義の冒頭の一部を紹介したものです。
※詳しい内容を知りたい方は、冊子「佛教文化」194号をご覧ください。