最先端の物理学と「空」

「空」とは、すべてのものは実体を持たず、常に移ろいゆくものであることを表しています。これは、あらゆるものは繋がり合い、依存し合って存在しているという「縁起の道理」を、別の形で表現したものです。また、「色即是空、空即是色」という般若心経の言葉に表されるように、形や色を持って表れたもの(色)は一時的なもので、あらゆるものが有と無のゆらぎの中で生まれ、消滅していくことこそが本質であることを示しています。すべてのものには、始まりも終わりもないということにもなります。

このような「空」の概念は、最先端の物理学の示す世界と共通点があることが知られています。

たとえば、何もないように見える真空も、微小な量子レベルでみると、実は正のエネルギーを持つ物質(正物質)と負のエネルギーを持つ物質(反物質)が常に生まれ、それらがぶつかり合って非常に短い時間で消滅しているということがわかってきています。

また、宇宙の始まりにおいても、微小な空間で起こっていたそのようなゆらぎの一つが大きくなり、大量の正物質と反物質が生み出され、わずかに正物質が残って、今我々のいる宇宙が生まれてきたのではないかといわれています。

何もない空間には、様々なものを生み出す膨大なエネルギーが存在し、そこは常にダイナミックにゆらいでおり、そのゆらぎ中であらゆるものが一時的に生み出され、また元に還っていくのです。これは、仏教でいう「空」の概念に似ています。

お釈迦様や龍樹菩薩は、世界のありのままの姿を「空」であるとご覧になりましたが、それが最先端の物理学の知見ともつながることは、仏教の奥深さを教えてくれます。

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